ICU・HCU新人看護師が覚えるべき観察項目10選!!

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 どうも、こたつです。

 ICU・HCUでの看護に慣れていない人だと、「重症患者が多くアセスメントが難しい。」、「どう考えたらいいかわからない。」と混乱してしまうことも多いですよね。きっと皆さんの職場にも「わかった雰囲気出すけどほんとは知ったかぶりしてるだけ」の人は何人かいるでしょう。それぐらいアセスメントは難しいことです。患者の身体所見や数値、検査結果を見ながら総合的にアセスメントすることが求められる領域で多くの知識が必要になってきます。そこで今回は、ICU・HCU新人看護師がまずは覚えるべき観察項目10選を挙げていきます。

観察の目的は「状態理解のための情報収集」と「異常の早期発見」

 観察は「ただ見て様子を記録する」という行為ではありません。新人看護師時代に目的をもって観察をする癖を持つことは非常に大切です。それでも、「ただ様子を記録してアセスメントが全くできずに状態悪化に気づけなかった。」ということをしている看護師は大勢います…。

 観察をすることで患者に関する様々な情報を収集することができます。その情報から身体に何が起こっているかを推測することで医師は処置や治療方針を検討します。そのため、観察の目的は「状態理解のための情報収集」です。また、「状態理解のための情報収集」の中でも、新人看護師に最低限求められることは「異常の早期発見」です。新人看護師であっても異常かもしれない状態を誰かに報告するということは、看護師・患者どちらのとっても最低限必要なことです。

 何のために観察するかを意識して意味のある観察にしましょう!

こたつの記事の新人看護師が働く上での心構えに関する記事はこちら 「新人看護師のここだけ注意すれば最低限許される心構え」

覚えるべき観察項目10選!!

 ICU・HCUでは様々な観察項目を理解する必要があります。働く上で必須中の必須の観察項目を上げました。参考にしてみてください。 

 すでにこたつが記事でまとめた観察項目も含まれているので良ければ該当記事も見てみてください。

①ABP(Aラインで測定した血圧)

 一般病棟ではマンシェットを用いて血圧測定をしていますが、ICU・HCUならではの管理として観血的血圧測定があります。動脈にカテーテルを留置し持続的に血圧をモニタリングできる、いわゆるAラインはクリティカル領域の管理の中では基本中の基本です。BP(血圧)の正常値や疾患や病態ごとで低血圧・高血圧になる原因や、その状態のリスクを考えることがクリティカル領域の管理につながります。また、Aライン特有の波形や、フロートラックなどの追加デバイスも重要になってきます。

②脈拍・モニター心電図

 循環動態のモニタリングで重要なものの一つとして脈拍があります。バイタルサインの一つである脈拍は様々な状態に関連して変化するものです。脈拍は脈拍数という速さ(頻脈・徐脈)不整(不整脈)・整(サイナス・洞調律)というリズムの二項目で異常かどうかを考えるようにしましょう。脈拍数に関しては正常値を覚えるだけで正常・異常を判断できます。しかし、不整脈かどうかという判断は多くの人がつまづくところです。そこで、私が新人のみなさんにお勧めする考え方は、正常波形(洞調律の波形)である条件を覚えるということです。正常波形でなければ異常波形です。すぐに指導者・リーダー・医師へ相談しましょう。

③SPO2

 身体の酸素化を評価するための一つの指標です。一般病棟でも頻繁に使われています。正常値を覚えることは必須です。しかし、ICU・HCU看護師はSPO2だけでなく、呼吸回数・呼吸音など複数の身体所見と、BGA(動脈ガス)の結果なども含め、総合して判断していることを念頭においてください。SPO2が正常値以下であることは、すでに酸素化がかなり悪くなっている状態です。SPO2低下を気付けないことは患者さんをかなり危険な状態にさせてしまいます。最低限SPO2の正常値は覚えましょう。新人看護師にとってSPO2が低下していることを早期に発見し上司に報告することが大切です。

④呼発回数

 呼吸回数も呼吸状態を評価する上で重要な項目の一つです。また、呼吸回数は呼吸という領域だけの観察項目ではなく、全身状態をアセスメントする上で重要な評価指標です。しかし、4、5年目になっても呼吸回数に関するアセスメントができない看護師が意外と多く非常に残念なことがあります。酸塩基平衡の代償作用としての呼吸回数上昇のように、何か大変なことが起こることで、結果として呼吸回数は上ります。呼吸回数が上がる原因を考えることがアセスメントにつながります。一年目から「呼吸回数が多いけど何かあるのかな。」と考えられたら、きっと先輩たちを困らせるか褒められるでしょう。

こたつの「呼吸回数」に関する記事はこちら

⑤呼吸音

 看護学生時代でも一番最初に習う診療援助は聴診です。その中でも呼吸音は基本中の基本です。その一方でいろんな場面で呼吸音という情報は役に立ちます。笛音・捻髪音・いびき音・水泡音など種類はありますが、重要なのは異常な音が聴取され、異常がどこかにあると気づくことができることです。その次のステップに、どこにどのような異常があり、どのような対応が必要かという判断・アセスメントの段階になってきます。新人看護師は何度も頻繁に呼吸音を聞きまくりましょう。

こたつの「呼吸音」に関する記事はこちら

⑥体温

 体温の異常値には低体温高体温がありますが、ほとんどの病棟では低体温よりも高体温に出くわす機会が多いでしょう。発熱の原因は様々なものがあります。感染症、術侵襲、麻酔侵襲、中枢機能によるものなど…。発熱が起きれば何が原因かを精査する必要があります。それには幅広い知識が必要なので新人看護師は即座にアセスメントできなくても良いと私は考えています。新人看護師にとってそれよりも重要なのは、発熱に伴うバイタルサインの変動や自覚症状の緩和への介入を考えることです。

例えば… 発熱による倦怠感によって頻呼吸になってしまい酸素化が悪化してしまうことがあります。また、倦怠感や呼吸苦によりせん妄が助長されてしまうことや、リハビリが進まないこともあります。鎮静剤の使用や清拭等の生活援助という介入も看護師ができる介入の一つです。「患者さんに何ができるのか。」という考えを新人時代に持てるようになりましょう。

⑧瞳孔所見

 脳神経外科・内科やICU・救急科でなければわざわざ瞳孔を観察することは少ないでしょう。しかし、瞳孔所見に異常があるということは、かなり頭蓋内圧亢進や脳虚血が進んでいる状態です。薬剤により出血リスクや血栓リスクが高い場合はもちろんのこと、症状安静や高齢というだけでも脳出血・脳梗塞のリスクはあります。動脈硬化脳神経系への異常がおこるリスクが低い患者でも、何か様子がおかしいときは瞳孔所見を見れるようにしましょう。瞳孔所見の異常が起こった時点ですでに脳実質への問題がかなり起きていると考え、その後の検査出しの準備や他の神経学的所見の評価も同時に行いましょう。

⑨ドレーンの性状・量

 術後の管理を行うサージカルICUではドレーン管理は特に重要になってきます。新人看護師がドレーン排液の性状や量の異常を適切に判断するために知っておかないといけないことは、ドレーンの留置位置流出しても問題ない正常な排液ドレーンの管理方法です。ドレーンには様々な位置に留置され目的が異なります。

 消化液を排液することで消化管内の減圧目的のために胆管などの消化管に留置されているドレーンや、消化管吻合後の出血や吻合部の浸出液などを排液するために腹腔内の消化管吻合部付近に留置されているドレーンがあります。また、頭蓋内圧・脊髄圧を管理するためにクモ膜下腔に留置されているドレーンもあります。それぞれドレーンの留置位置・排液されて問題ない性状・管理方法は十分理解しておきましょう。

 

⑩採血検査データ(特に動脈採血ガスデータ)

 採血結果をアセスメントできるかできないかで緊急性・重要性・治療の方向性などアセスメントの質は雲泥の差です。しかし、採血データを読めている気になっている看護師もいるので採血データのアセスメントができなくても看護師やっていけるのも現実です。それでも、せっかく看護師として働いていて、ましてやクリティカルケアで働いているのなら採血データをアセスメントできるようになりましょう。

 新人看護師時代では、まずは検査結果がどうだったかという検査結果を見る癖を付けることが大切です。

 特にICU・HCUでは動脈血ガス分析(BGA)を頻回に行い患者の状態を評価します。BGAを頻回に評価している場合は身体の特にどこの評価を行うためのBGAかを考えることも大切です。酸素化の評価がしたいのか、出血がないかを評価したいのか、血糖の変動がないかを評価したいのか、腸管などの虚血の状態が起こっていないかを評価したいのか、、、。主要な目的を考えながらBGAを取ると、医者がどのような思考で身体管理を行っているかを理解する第一歩になるでしょう。

今の時点では観察項目の理解を深め、正しく観察する

 新人看護師時代は数多くの観察項目を覚えていく必要があります。しかし、臨床で求められるアセスメントは、観察項目単体だけでなく、いくつかの観察項目や検査結果を基にして、総合的に考えられたアセスメントです。また、観察項目の一つ一つでさえも、いろんな条件下で変動するものばかりです。ゆくゆくは複数の観察項目を根拠として臨床推論を行うことが求められますが、まずは観察項目の一つ一つの意味を理解し正しく観察できるところから新人看護師時代は徹底していくと良いのではないでしょうか。

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