新人看護師向け VS(バイタルサイン)の奥深さ 海底二万マイル 呼吸音編②

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 今回もご愛読ありがとうございます。

 どうも、こたつです。

 看護師の中にも呼吸音をなんとなく聴取してアセスメントをした気になっている人が何人もいます。呼吸音を聴取することもドラマや映画で見るものとは違い意外と神経を使うものですが、ただ聞くだけではなく、医療職のプロとしてアセスメントしケアや治療に活かしていけたら尚よいでしょう。

 今回はアセスメントに必要な呼吸音の関連知識を一部紹介していきます。新人ICU・HCU看護師はもちろんのこと、新人看護師全員にとって有益なものとなるうれしいです。

痰を疑うなら呼吸音

 看護師にとって呼吸音の聴取と言ったら喀痰の問題でしょう。【SPO2低下】→【呼吸音聴取】→【ラ音聴取】→【喀痰による気道閉塞】→【体位ドレナージ】or【姿勢を整え咳嗽】というような「情報収取」→「アセスメント」→「介入」を行う場面は何度もあります。喀痰に関する介入は、看護師が最もでしゃばることができる場面の一つです。体位ドレナージ・タッピング・スクイージング・加湿デバイスなども関連して勉強するのをお勧めします。業務に直結する知識です。

呼吸音だけではアセスメントが弱い

呼吸音といってもただの音

 大前提として、基本的な観察項目は一つだけでは、医療職が介入方法を決めるための強い根拠になりません。呼吸音もそうです。呼吸音を聞いたとしても実際に気道の中が見えているわけではないため、あくまで推測をしているという段階です。その推測の質を高めるために、複数の観察項目や検査結果という手掛かりをヒントにします。

喀痰が多いという申し送りがあったからといって本当に痰詰まりの?

 呼吸音だけをアセスメントの根拠にすることで痛い目を見ることがあります。喀痰が多そう、煙草をかなり吸っていたという理由で酸素化の悪化や呼吸音減弱が痰詰まりだと判断していませんか

 喀痰が多く頻回に咳嗽することや、鼻腔から気管内までカテーテルを挿入し気管吸引を行うことで気胸になることがあります。また、胸部の処置・術操作は医原性の気胸が起こるリスクがあります。気胸によっても呼吸音は減弱してしまいます。元々痰が多い、喫煙歴があるという情報だけを考え勝手に痰詰まりと考えてしまうことがあります。至極当然なことに気胸は吸引で改善することはありません。気胸の場合、血圧低下・リーク・皮下気腫・胸痛などを伴います。また、レントゲンなら手軽で明確な肺所見が見られます。

呼吸音に関する危ない認識

 呼吸音は気道という何度も分岐する筒を通って、という無数の小さな風船へ流れることで生じます。異常音が生じるということは「空気の流れはあるがスムーズではない」ということです。音が聞こえないということは「空気の流れがない」ということです。間違った認識は、「水泡音=痰」、「呼吸音減弱=胸水」というように、呼吸音の種類を何らかの特定な原因にそのままつなげてしまう認識です。

呼吸音に関連して見ておきたいところ

 呼吸音だけでは強い根拠になりません。呼吸音に関連してよく考えらえる観察項目を挙げてみました。

胸郭の動き

 呼吸音の左右差だけでなく胸郭の動きに左右差が出てしまう場合はかなり緊急度が高いことが多いです。片肺挿管重症気胸など。

リーク・皮下気腫

 気胸に合わせて覚えてほしい項目です。胸腔内に留置されたドレーンからのエアリークや胸部・頚部・背部への皮下気腫は、肺から胸腔内へ空気が漏れていることが示唆できる所見です。

尿量、IN・OUTバランス、炎症データ

 炎症反応が全身に及ぶSIRS心不全の悪化などでは多量輸液と乏尿によりINオーバーになってしまうことが多いです。そのような状態では胸水増加のリスクが高まります。乏尿なのか、INオーバーなのか、炎症反応は高いのか、高侵襲状態なのかということを見ておくと、胸水による肺拡張障害のリスクも念頭に置くことができます。

レントゲン・CT所見

 検査の中でも生体検査は体の物理的な構造を見ることができ、中でもレントゲンは超音波診断装置の次にポータブル化されており、非常に手軽です。レントゲンを見ることで気胸・無気肺・痰詰まりだけでなく、COPD・間質性肺炎など様々な肺疾患の所見を識別できることができます。呼吸状態の悪化の原因の目途が立たない時は一先ずポータブルレントゲンを撮るという医師も聞いたことがあります。CTはレントゲンよりも立体的に肺状態を見ることができます。

さらにステップアップ

 呼吸音と関連付けて押さえておきたい項目は、場面によって色んなものがあります。求めらるのは、状態を推測するために他にどのような情報が得られるかを考えながら情報収集することです。新人時代では難しいことも多いかもしれませんが、今は何の情報が必要かという考えを念頭に置くだけでも一歩ステップアップした介入につながるかもしれません。

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